映画 ベン・ハー(59米)
西暦26年。ユダヤにローマからメッサーラが軍団司令官(tribune)としてやってきて,幼なじみでそこの有力者でもあるジュダ・ベンハーと再会した。ベンハーはローマの軍隊を引き揚げるように言うが,メッサーラは皇帝の意志をたてに承知しない。逆に協力を求めるメッサーラに,ベンハーは暴力はよくないとだけ言った。
翌日,メッサーラはベンハーの館を訪ねた。ベンハーの妹は五歳のころからメッサーラを慕っていた。メッサーラは,先年征服したリディアの宝物をプレゼントした。
ベンハーは前日すぐ仲間と話しており,メッサーラに,暴力反対でもだいたいは一致していると言った。しかし,そうでない者の名を聞き出そうとするメッサーラに名前を教えず,メッサーラは怒って出ていった。
ベンハーがくつろいでいると,奴隷が挨拶に来た。娘が結婚するというのだ。娘エスターに引き合わされると,それがあまりに美しいのでベンハーは言葉もなかった。我に返ったベンハーが少しずつ質問をすると,エスターは相手とほとんど会ったこともないという。エスターは子供のころ,屋敷を訪ねたときにベンハーに会い,それ以来慕っていたのだ。ベンハーは,ソロモン王だったら奴隷の女を自由にできるのにと言いつつ,結婚祝いと言って解放してやった。
新任総督Gがやってきた。ベンハーと妹はその入場行進を屋上から見物していたが,瓦が崩れ落ちて馬が驚き,総督が落馬した。ベンハーと妹,母は捕らえられた。ベンハーがいくら懇願してもメッサーラは冷たく,ベンハーは裁判なしでガレー船に送られることになり,母娘は投獄された。
護送される途中,ナザレの町で囚人に水が与えられたが,隊長の命令でベンハーにだけは与えられなかった。ベンハーがうずくまり,神に祈ったとき,水をくれる者がいた。隊長はその男に注意しようとしたが,立ち上がったその男の威厳に気圧され,何も言えなかった。
三年の歳月が流れた。ベンハーが漕ぎ手をしている船に,執政官アリウスが乗船した。マケドニアの海賊を退治に行くのだ。アリウスは漕船室を見物し,通常速度から戦闘速度,攻撃速度,突撃速度へとペースを速めさせる。執政官は,不敵な表情でにらみつけるベンハーに目をつけた。
執政官が眠っているところに,ベンハーがはいってくる。執政官は驚いて目覚めた。休憩時間にベンハーを寄越すように言っていたのを忘れていたのだ。執政官が殺そうと思えば殺せたのにと尋ねると,ベンハーは犬死にするわけにはいかないと言った。執政官はローマで競技に出ることをもちかけたが,ベンハーは脱走してみせると言って断わった。執政官は脱走の可能性を笑うが,ベンハーは,神が無駄に三年もガレー船漕ぎをさせたはずがないと言った。執政官は,これだけの苦難にあってなお失わない信仰心に感心した。
海賊が発見されると,奴隷たちは足の鉄輪に鎖を通されたが,執政官の命令でベンハーだけは外された。海戦中,敵艦の突撃を受けると,浸水し,奴隷たちが騒ぎ出した。ベンハーは監視人を倒して鍵を奪い,奴隷を解放すると甲板に出た。そこで執政官を狙う海賊を槍で倒し,海に落ちた執政官を助けて浮いている板の上に引き上げた。自殺をはかる執政官を制止し,助けを待った。
船影が見えた。執政官は,帆は四角かと聞く。四角帆ならローマ船。敵船であれば執政官は望みどおり殺され,ベンハーは解放される。しかし,それはローマ船だった。
二人は引き上げられた。執政官は敬礼で迎えられ,海戦はローマの大勝利だったと言われた。ベンハーを無視して祝辞を受けていると思えた執政官だったが,水が持ってこられると自分より先にベンハーに飲ませた。
執政官はローマで皇帝から勝者のバトンを授けられた。ベンハーは戦車競技に何度も勝ち,執政官の養子となった。
しかし,ベンハーは母と妹をさがさなければならない。アリウスは,まもなく総督が友人のピラトに交代するからそれからにしてはどうかと言った。しかし,ベンハーはユダヤへと急いだ。
途中,アラブ人が四頭立ての戦車の調教をしているのを見かけたが,カーブを曲がりきれない。ベンハーは外側に落ち着いた馬がいるのでそれを内側にすればいいなどとアドバイスし,感心された。アラブ人の族長は,エルサレムのレースで四連勝しているメッサーラと対戦するから出てくれないかと言われた。ベンハーの表情で,族長はベンハーがメッサーラを憎んでいることを知り,ユダヤ人としてローマ人を負かしてみろと言う。しかし,ベンハーは自分のやり方でやると言った。同行していたバルタサールは,ベンハーの殺意を指摘して諫めた。一方,族長は,そのレースはルールなしで,今までに何人も死んでいると言い足した。故郷に戻ってみると,ベンハーの屋敷は荒れ果てていたが,エスターが待っていた。ベンハー母娘についての嘆願に行ったところ,父親が捕らえられて拷問された。それで足が不自由になった父親についているため,結婚せずに残っていたのだった。ベンハーは,エスターを送り出すときにもらった指輪をまだしていることを見せ,二人は抱き合った。
ベンハーは執政官の息子としてメッサーラに会い,母娘が無事なら恨みは忘れてやると言った。メッサーラは慌てて五年間も放置していた地下牢の二人について調べさせた。二人は生きてはいたものの,業病(lepers)にかかっており,追放されることになった。
二人は夜,屋敷でエスターに声をかけた。しかし,病気の姿を知られたくないため,ベンハーには黙っているようにと言った。エスターは,ベンハーには二人は死んだと話した。
映画 ベン・ハーあらすじ~ベンハーとの再会~
メッサーラのところにアラブ人の族長が現われ,戦車競技の賭けをもちかけた。しかし,乗り手がベンハーだと聞いて乗ってくるものはいなかった。メッサーラだけは,なりゆきで,四対一の倍率で1000タラント賭けることを了承した。
レース当日,メッサーラは「ギリシャ式戦車」で現われた。車輪に刃がついているのだ。レースが始まると,メッサーラによって次々に落伍していく。トラックに倒れた者を,係の者が飛び出して引き上げるが,そこに次の戦車が迫ったりすると観客も息を飲む。救助係も命がけだった。
9周するコースの最後近くなって,メッサーラは追い上げてきたベンハーにむちを振るったが,ベンハーはむちを捕らえ,逆にメッサーラをたたき落とした。メッサーラは後続の馬にひかれて重傷を負った。
メッサーラはすぐさま手術が必要な状況だったが,足を切断する前にベンハーにまみえると言って聞かなかった。ベンハーが来ると,まだ勝負はついていない,母妹は死んだと思っているだろうが,業病の谷に行ってみるといいと言い,こときれた。
ベンハーが谷に行くと,エスターとはち合わせした。エスターは,二人の気持ちを考えて来なかったことにしたほうがいいと言った。あくまで会おうとするベンハーだったが,洞窟から出てきた二人の姿を遠目に見ると,岩陰に隠れた。エスターは,二人に近づかないように食物を置くと,引き下がった。
エスターは,愛と許しを説くナザレ人に心酔しており,二人を救うためにラビに会わせようと考えた。ところが,谷に行くと,母しか出てこない。娘は死にかけているのだという。それを聞いてベンハーが飛び出してきた。母は洞窟に引っ込む。エスターは思い切ってその近くまで寄り,連れ出そうとした。それを見てベンハーも洞窟にはいって行き,妹をみつけて連れ出した。
ところが,エルサレムに着いてみると,そのナザレ人が死刑にされるところだった。それを見て初めて,ベンハーは,ナザレで水をくれたのがその男だと知った。十字架を背負って坂道を上る男が倒れたとき,ベンハーは水を持っていってやった。
ナザレ人は,他の二人の罪人と一緒にはりつけにされた。
エスターはベンハーの母妹を連れて郊外の洞窟にいたが,そこで嵐に遭った。嵐が去ってみると,二人の肌はきれいになっていた。らいが治ったのだ。
二人はベンハーと抱き合って再会を喜んだ。